芦屋のヨドコウ迎賓館 designed by フランク・ロイド・ライト

芦屋に行く機会があり,阪急を乗り継いで芦屋川駅へ.大きな商業施設のあるJR芦屋駅前に比べると,特に何があるというわけでもなく,駅のすぐそばを芦屋川が流れている.神戸もそうだが,このあたりは坂が多くてきつい.

芦屋川沿いに六甲山に向かって上り坂を歩いていて,ふと気付いたことがある.

ドイツ車,それもメルセデス・ベンツとBMWしか走っていない.

まあ,さすがにこれは言い過ぎで,レクサスやテスラも走っていた.

兵庫県芦屋市の小高い丘に建つヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)は,灘の酒造家8代目山邑太左衛門の別邸として建てられた.20世紀を代表する世界的建築家フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)が1918年に設計し,1924年(大正13年)に完成した.

夕方の待ち合わせまで時間があったので,芦屋周辺で見所を探したところ,ヨドコウ迎賓館を見付けた.特に建築に興味があるわけでもないのだが,フランク・ロイド・ライトの設計で,当時のままに残っている数少ない建築物らしいので,この機会に見学することにした.

芦屋川駅からゆっくり歩いて10分ほどだ.

小高い丘の斜面に沿って建物が階段状に連なる,ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)の独特の外観は,遠くからでも見える.

道路から敷地に入ると,右手に住宅が見える.水平の庇が強調され,大谷石と幾何学的な装飾が目を引く.ライトが設計した旧帝国ホテルにも通じるデザインだ.

1階の車寄せは左右対称で,大きな吹き抜け状の開口部となっており,南側の景色を見通せるように設計されている.また,上階の梁を「逆梁」にすることで,天井を平らにし,視界を遮らないすっきりとした空間を生み出している.

玄関は奥まったところにあり,目立たない.

ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)の特徴は,ライトが提唱した「有機的建築」の思想にある.斜面の地形を生かして建物を配置し,建築と周囲の自然が一体となるように設計されている.日本に残るライトの住宅建築のうち,建築当初の姿をほぼ完全に残しているのはヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)だけで,1974年には,大正期の建築かつ鉄筋コンクリート造住宅として初めて国の重要文化財に指定された.

2階の応接室の入口は狭く,装飾された大谷石の暖炉や柱にはさまれている.室内の天井は高く広々としている.狭い入口が広い室内空間を強調しており,このような空間構成をライトは好んで用いたそうだ.南側にはバルコニーがあり,芦屋市街が眺望できる.東側と西側のソファーは外の景色をゆっくりと眺められるようにと設けられたらしい.

なお,応接室の机と椅子は当時のものではない.

3階には3室続きの和室があり,洋風建築の中に日本的な空間が組み込まれている.土壁など日本建築の素材も用いられており,ライトが日本の建築文化から受けた影響を感じられる.小窓が多く,欄間には飾り銅板が使用されている.

この和室は,当初のライトの設計にはなく,施主の強い要望で実現した.

3階には家族寝室もある.そこには,竣工90周年を記念して復元された竣工当時の机と椅子が置かれている.机は脚から天板が外側に突き出すキャンティレバー(片持ち梁)という独特の形状をしている.

4階の食堂は,暖炉を中心に左右対称の厳格なデザインになっている.暖炉右側の扉は奥の厨房への入口になっている.厨房には当時(大正末期),欧米製の高価な電気製品が並んでいたそうだ.天井は中央部が最も高い四角錘のような形状で,三角形の小窓がアクセントになっている.

旧山邑家住宅は1924年(大正13年)竣工だが,既にオール電化だった.驚くべき贅沢さだ.

食堂から続く広大なバルコニーからは,六甲の山並みから芦屋市街,大阪湾までを一望できる.とても素晴らしい眺めだ.

3階奥の寝室だった部屋で,ビデオによる説明を視聴することができる.充実した解説でとても勉強になった.ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)を訪れる機会があれば,見学する前にこのビデオ解説を見るのがいいと思う.見所がよくわかる.

ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)に1時間ほど滞在したが,予想以上に楽しむことができた.入館料は大人500円.安い.フランク・ロイド・ライトが言う有機的建築というのも感じることができた.

お勧めだ.

なお,週の半分くらいしか開館していないため,行く前に確認しよう.

© 2026 Manabu KANO.

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次