台風25号が関東に迫る9月21日.ニュースで安全確保が叫ばれる中,昼前の秩父到着を目指して自宅を出た.天気予報では秩父はずっと雨,しかも午後からは豪雨だ.昼までは鉄道は動くと想定したが,秩父ではホテルで缶詰かもしれない.それでも,9月22日のベンチャーウイスキー秩父蒸溜所の見学が今回の旅の目的なので,21日に台風が通り過ぎてくれればそれでいい.
最近,天気については超強運なので,雨に降られることすらなく,長瀞の岩畳を見学し,寳登山(ほどさん)神社を参拝し,豚みそ丼を食べて,秩父に戻ってきた.
秩父には物凄いウイスキー屋さんがある.麻屋商店だ.イチローズモルトの定番ボトルがすべて定価で売られているのは当然のことながら,とても貴重なオフィシャルやボトラーズのボトルが揃いまくっている.しかも,自分のところで企画したボトルもある.そして,超高級なボトルについては,50mlなどに小分けして販売してもいる.
秩父神社を参拝した後,店主に自分の好みや欲しいボトルの特徴などを伝えて,何本か勧めていただき,最終的に2本購入した.さらに,小分け瓶も2つ購入した.これらの話は別の機会に.
既にウイスキー三昧の夕方,ハイランダーイン秩父(Highlander Inn CHICHIBU)に向かう.
The Highlander Innは,スコットランド・スペイサイドのクレイゲラヒにある,世界中のウイスキー愛好家に知られる有名なホテル兼ウイスキーバーだ.本場スコットランドの温かいパブ文化や豊富なシングルモルトウイスキーで知られている.そこが日本で開いたウイスキーバーが,ハイランダーイン秩父だ.なお,本国とは異なり,Innと名乗っているが,宿泊はできない.
古民家を活かした,とても良い雰囲気のバーだ.ウイスキーの品揃えが凄まじい.カウンターの後ろだけでなく,蔵にもある.500本くらいだろうか.


まずは,食事ということで,フィッシュアンドチップスとコロッケを注文した.飲物はおまかせハイボール.ノンピートとピートだけを選ぶことができて,ウイスキーが何かはおまかせ.出てきたところで銘柄をきくと,ボトルを持ってきてくださった.グレンファークラス13年だった.


食事を済ませたところで,座敷からカウンターに移動し,本格的にウイスキーをいただく.
最終的に4杯いただいた.まず,それらを簡単にまとめておく.
| ボトル | 年数・ヴィンテージ | 度数 | 樽番号・瓶詰本数 |
|---|---|---|---|
| インフリークエント・フライヤー インチガワー | 14年・2008–2022 | 54.7% | #806199・255本 |
| マギーズ・コレクション ベンネヴィス | 18年・2007–2025 | 48.4% | #10154・278本 |
| THE WHISKYFIND スペイサイド BAD BOY #1 | 7年・2016–2023 | 54.8% | #247・329本 |
| Ken’s Choice KANADE -奏-「琵琶」安積 | 6年・2019–2025 | 60.5% | #23181・210本 |
最初の一杯は自分で蔵に行って選んできた.見たことのないボトルがズラリと並び,思い切り目移りするが,最初に選んだのは,インフリークエント・フライヤー インチガワー 14年だ.
インチガワー 2008・14年
Infrequent Flyers — Dark Rum Finish/Release No.92


Whisk-e Ltd.が選定した,日本向け限定のボトル.インチガワー 14年,54.7%.
2008年2月11日蒸溜,2022年11月瓶詰めで,ダークラム樽フィニッシュのカスクストレングス.このため,同じインチガワーでも,蒸溜所の通常品とは樽構成も度数も異なる.なお,ダークラム樽での熟成期間は不明.
インチガワー蒸溜所は,スコットランドのスペイサイド北部,海沿いの町バッキー(Buckie)にある蒸溜所だ.1871年にアレクサンダー・ウィルソンによって設立され,その後ベル社の傘下に入り,現在はディアジオに属している.ブレンデッドウイスキー「ベル」の重要な構成原酒でもある.酒質の特徴として,スパイシーさやワックスのような質感が挙げられる.
ボトラーは,アリスター・ウォーカー氏が2018年に設立したスコットランドの独立系ボトラー,アリスター・ウォーカー・ウイスキー・カンパニー(Alistair Walker Whisky Company)だ.アリスター・ウォーカーは,バーン・スチュワート,ベンリアック,グレンドロナック,グレングラッサなどに関わった後,独立してボトラーを立ち上げた.父親はビリー・ウォーカーだ.
「Infrequent Flyers」というシリーズ名には,品質が高くても普段はあまり見かけない蒸溜所・原酒を紹介する,という意味が込められている.飛行機のラベルは,このシリーズの考え方と結びついている.
ベンネヴィス 2007・18年
The Highlander Inn — Maggie’s Collection
2杯目は,「バーボン樽熟成の美味しいのを飲みたい」とリクエストして選んでもらった.
ハイランダーイン・クライゲラキによる日本向けマギーズ・コレクションのシングルカスク,48.4%.
2007年蒸溜・2025年瓶詰めのバーボンカスク18年熟成.ラベルの「すごく愛して、なが〜く愛して」という日本語が,日本向けという位置づけを明確に示している.
ベンネヴィス蒸溜所は,スコットランド西部のベンネヴィス山の麓にある.1825年にジョン・マクドナルドが設立し,1989年にニッカウヰスキーが取得した.
このボトルは,ハイランダーインが原酒を選定し,マギーズ・コレクション(Maggie’s Collection)シリーズとしてリリースしているもので,地元のアーティスト,マギー・リーグラー(Maggie Riegler)の作品をラベルに使うシリーズだ.ハイランダーインは2005年から年次シングルカスクをリリースし,2005~2012年のラベルを彼女が担当した.彼女が亡くなった後も,その作品をマギーズ・コレクションのラベルとして紹介し続けている.


スペイサイド BAD BOY #1
THE WHISKYFIND — Finished in the Peated Cask from Mull
3杯目は,「クライゲラヒを飲みたい」とリクエストして出してもらったボトル2本から選んだ.
このボトルはスペイサイド原酒をマル島由来のピーテッド樽で追熟したウイスキーで,蒸溜所名は公開されていないが,クライゲラキだ.
2016年蒸溜・2023年瓶詰めの7年熟成,54.8%.マル島由来の「ピーテッド・バーボン樽」で追加熟成させることにより,海風を思わせる塩気やオイリーな果実味,ほのかな煙の要素を重ねる設計だとされている.
BAD BOY #1は,レダイグのピーテッド樽で追加熟成させている.レダイグは,マル島のトバモリー蒸溜所が造るピーテッド・シングルモルトの名称で,トバモリー蒸溜所はノンピートの「トバモリー」とピーテッドの「レダイグ」の2系統を造っている.
ボトラーは,台湾を拠点とする独立系ボトラーのザ・ウイスキーファインド(THE WHISKYFIND)だ.
Ken’s Choice KANADE -奏- Biwa 琵琶 シングルモルト安積6年
Buffalo Trace Single Barrel 1st Fill


4杯目は,「めいっぱいフルーティな美味しいのを飲みたい」とリクエストして選んでもらった.
バーボン樽を二段階で使った,安積(ASAKA)のシングルカスクで,2019年7月から2025年10月までの6年熟成,60.5%.
熟成方法に特徴があり,ノンピートのバーボンバレルで原酒を4年熟成させた後,Ken’s Choiceとしてリリースされたバッファロートレース・シングルバレルの空樽へ移し,さらに2年熟成している.
安積蒸溜所は,福島県郡山市の笹の川酒造が運営する蒸溜所だ.笹の川酒造の創業は1765年で,1946年にウイスキー製造免許を取得している.現在の安積蒸溜所としての始動は2016年冬だ.YAMAZAKURAは安積蒸溜所のブランドだ.
Ken’s Choiceを展開するのは,ケンズ・チョイス・ジャパン合同会社だ.KANADE -奏-は,和楽器を奏でる姿をテーマとする,シングルカスクのジャパニーズウイスキー・シリーズで,琵琶はその第6弾にあたる.
公式商品案内では,クリームブリュレ,トフィー,焼きリンゴのような甘味に,ココナッツ,スパイス,穏やかな木の風味が重なるとされている.バーボン樽の甘香ばしさを,二段階の熟成で引き出した安積という特徴が明瞭とされる.
私のテイスティング能力ではそこまで引き出せないが,とても美味しかった.
© 2026 Manabu KANO.

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