台湾のカバランを成功させたイアン・チャンがマスターブレンダーとして参画したことで,世界中から注目されている小諸蒸溜所.軽井沢に近い浅間山の麓で,豊かな自然に囲まれて,シングルモルトウイスキーを作っている.
蒸留を開始してまだ3年経っていないため,小諸蒸溜所のジャパニーズウイスキーは世に出ていない.最初の原酒が樽で熟成されている途中だ.そんな小諸蒸溜所の見学に行ってきた.
朝一番のバスで京都駅に向かい,東京駅で駅弁「昭和百年弁当」を買って,東海道新幹線から北陸新幹線に乗り換え,軽井沢を目指す.さらに,しなの鉄道で軽井沢から小諸へ.


小諸駅前には小さいながらもよく手入れされた公園があり,カフェも併設されていて,良い感じだ.その公園にガンダムマンホールもあった.


小諸駅から小諸蒸溜所までは,「こもろ周遊バス」を利用した.小諸市内を巡る公共バスで,車内で1日乗車券(500円)が買える.
小諸蒸溜所も直通バスを運行しているが,小諸駅から小諸蒸溜所へのバスは平日のみの運行で,土日・祝日はこもろ周遊バスを使うことになる.
小諸駅から小諸蒸溜所までは3kmなので歩けなくもないが,行きはかなりの登坂になる.キャリーケースを転がして行く気にはならなかった.


バスはどんどん標高を上げていき,9分で小諸蒸溜所に着いた.
田園風景の中に,突如として立派な蒸溜所の建物が現れる.
新興のクラフト蒸溜所でありながら,建物は大きい.道路から多数のタンクが見えている.大きなガラス張りの建物は,明らかに,見られることを意識している.


その建物に入り,受付を済ませる.


今回申し込んだのは,KOMORO EXPERIENCE PLUS+という見学コースだ.
製造工程と熟成庫の見学ツアーと原酒2種類の試飲からなり,お土産ももらえる,スペシャルなコースだ.
KOMORO EXPERIENCE PLUS+
コモロエクスペリエンス プラス
自然の中で味わう、熟成の歩み
少人数でご案内する製造ツアーと、熟成庫見学ツアーに原酒のテイスティング体験で小諸蒸留所を満喫しましょう。
一般的な製造工程の説明にとどまらず、小諸蒸留所ならではのこだわりに触れていただける、他にはない内容となっています。
熟成庫前に特設された「森の試飲場」にて、テイスティングを行います。日々熟成を重ね、ウイスキーになるその日を待つ小諸蒸留所のニューボーン(熟成3年未満原酒)を2種類ご用意。本プラン限定にセレクトした特別なものもご用意しております。
小諸の風を感じながら熟成の歩みを感じてみませんか。
・製造ツアー & 熟成庫見学ツアー:約40分
・小諸蒸留所原酒2種のテイスティング体験:約20分
・お土産:オリジナルグラス & グラスホルダー
料金:¥6,000(税込)


13時のツアー開始まで,1階を見てまわる.
ショップとバーの間に,様々な原酒がディスプレイされていた.小さな樽も.
ショップでは,小諸蒸溜所オリジナルのドライフルーツ,コースター,テイスティンググラス(1脚1万円を超えていて驚いた)などの他,ウイスキーには関係なさそうなアクセサリーなども売られていた.
ウイスキーだけを製造販売すると決めているので,少なくとも3年間は製品が存在しない.企業としてキャッシュフローを生み出すための苦肉の策なのだろう.ジンなどを作って凌ぐ蒸溜所もあるが,小諸蒸溜所はモルトウイスキーしか造らない方針だ.


フレーバーホイールは初めて見た.全16種類の香りを体験することができて,面白かった.
バーも広い.決して交通の便がいいところではないが,多くの見学客が訪れるのだろう.


バーコーナーからは製造設備全体を見ることができる.
木製のタンクとポットスチルが目を引く.


13時少し前に,2階に上がる.
ここからもポットスチルなど製造工程が見渡せる.


この2つのポットスチルを見て,手前にある大きい方が初留釜,奥にある小さい方が再留釜だと思った.ところが,見学ツアーで説明を聞くと,その逆だった.
蒸留する液量を考えれば,初留釜の方が大きくなるはずだ.その逆になっているのは,実は,初留2回分をまとめて再留しているからだ.これは生産性を高めるための工夫だとの説明があった.
ちなみに,ポットスチルはフォーサイス(Forsyths)社製だ.カバランもフォーサイス社のポットスチルを使用しているとのことで,イアン・チャンの意向が強く反映されているのだろう.


今回,KOMORO EXPERIENCE PLUS+に参加するのは3名だった.
小諸蒸溜所の仕込み水を飲みながら,説明を聞く.この水は浅間山の水で,日本国内の水としてはとても硬度が高い.つまり,ミネラルを多く含んでいる.このミネラルが,酵母の働きを良くして,アルコール収量を向上させるらしい.
原料の大麦はスコットランドから輸入したもののだ.国産大麦も少量使用しているが,とにかく国産大麦は生産量が少なく,価格も高いため,輸入大麦にせざるをえないとのことだ.およそ9割の大麦はノンピーテッドで,1割がピーテッド.そのピーテッドの大麦は12月と1月にだけ使用するらしい.
小諸蒸溜所は木製の発酵槽とステンレス製の発酵槽の両方を使っている.ちなみに,カバランはステンレス製の発酵槽しか使っていないらしい.それは亜熱帯の気候によるもので,温度と湿度が高く,菌の管理が難しいために,木製タンクは使いこなせないとのことだった.つまり,小諸蒸溜所でイアン・チャンは初めて木製タンクに挑戦するということだ.
製造工程は温度制御も湿度制御もされていない.空調設備はまったくない.これは,小諸の自然環境を存分に活かした原酒を造るためだという.
なお,製造工程の見学中は写真撮影が禁止されているため,写真はない.


製造工程を見学した後,貯蔵庫に向かう.案内役の方は熊除けの鈴と,熊除けスプレーを持っていた.
小諸蒸溜所にある貯蔵庫は2つ.どちらも同じドーム型をしている.黒い屋根は非常に薄くて,貯蔵庫内の温度は外気温の影響を受けやすい.冬は−10℃を下回り,夏は30℃を越える.これも小諸の自然環境を存分に活かした原酒を造るためだという.
選び抜いた小諸の土地の個性を徹底的に活かすウイスキー造りを行っていることがよくわかった.


見学を終えて,2階に戻ってきた.いよいよ原酒のテイスティングだ.
原酒は2種類.ノンピーティッドのニューボーンとピーティッドのニューボーン.まだ3年の熟成を経ていないため,ジャパニーズウイスキーを名乗ることはできない.それでも,しっかりと樽の色がついている.
まだまだ若い原酒だが,美味しい.将来が楽しみだ.個人的には,ピーテッドが気に入った.
まあ,前日にも超ヘヴィリーピーティッドなオクトモアを飲んでいたくらいなので…
ペアリングは羊羹ショコラ.ニューメイクを混ぜているらしい.

大いに満足した.
2階には,イアン・チャンが使っているブレンドルームがあり,多数の小瓶が並べられていた.その多くは無色透明なニューメイクだ.


バスの時間まで1時間ほどあったので,1階のバーでくつろぐことにした.
まずは,ノンピーティッドとピーティッドのニューメイク2種飲み比べ.自家製ジェラートとともに.
ニューメイクは樽で熟成する前,蒸留したあとの原酒のことだ.香りも味も,樽熟成を経た原酒とはまったく異なる.実は,ニューメイクは苦手だ.あの独特の生(なま)感が好きになれない.それでも,ニューメイクを飲む機会は滅多にないため,注文した.
メニューに,ニューメイクやニューボーンの原酒だけというのはなく,ニューメイクは自家製ジェラートと,ニューボーンは羊羹ショコラとのペアリングでの提供だった.
やはり,ピーティッドの方が美味しく感じる.飲み比べてから,バーテンダーの方に勧めていただいたので,ニューメイクの原酒を自家製ジェラートにかけて食べてみた.とても美味しかった.ペアリングを追求しているだけのことはある.


バスの時間まで,まだ余裕があったので,「KOMOROピザ -麦豚のバーベキューソース仕立て-」と「カクテルKOMORO – ニューボーン –」を注文した.
この麦豚は,蒸溜所から出る大麦のカスを食べているそうだ.見学中に,是非食べてねと強く勧められていたので,折角の機会に食べてみた.美味しかった.


小諸駅までの帰りは,小諸蒸溜所の送迎バスを利用させていただいた.こもろ周遊バスを使うしかないと思っていたのだが,見学前にスタッフの方に声を掛けていただき,送迎バスに乗ることにした.有り難い.
KOMORO EXPERIENCE PLUS+のお土産は,小諸蒸溜所のロゴ入りテイスティンググラスとグラスホルダーだ.グラスホルダーを使う機会はなかなかなさそうだが,夏のウイスキーメッセに持参しようと思う.


大満足の小諸蒸溜所見学だった.
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