著者は,「自転車運動に対する身体適応および日常的自転車使用による健康づくりの可能性」という学位論文で博士号を取得しているので,この分野の専門家だ.実際の実験データに基づいて,自転車運動が健康・体力向上に効果的であることを力説している.
ただ,本書「自転車に乗る前に読む本」の重要な指摘は,自転車に乗れば無条件に健康になれるわけではなく,生理学的に適切な強度・時間・頻度で自転車に乗る必要があるということだ.
自転車は,歩行やランニングなどと比較して,脚や膝への衝撃が小さく,適切な負荷をかければ十分な有酸素運動になる.単に「有酸素運動はいいぞ!」と述べるだけでなく,どのような仕組みで有酸素運動の継続が内臓脂肪・脂質代謝・糖代謝などの改善に繋がるかを生理学的に説明しているところに本書の特長がある.勉強になった.
ロングライド(長距離サイクリング)が必要なわけではない.日常の通勤や移動でも,乗り方次第で筋力や持久力の向上につながる.自転車を侮ってはいけない.
ただ,自転車で健康になりたいのであれば,乗り方が重要になる.何km/hで走ったか,何kmを走ったか,ではなく,心拍数などから見た身体への負荷が重要になる.負荷が弱すぎても強すぎても効果は得られない.本書では,心拍数,走行時間,負荷などを用いて適切な運動強度が示されている.
「自転車に乗る前に読む本」というタイトルだが,「自転車に乗る気になるために読む本」だ.
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